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「はあぁぁ……」───ため息しか出ない。
「公平、女の子たちが呼んでる」
麻琴が何処からか戻ってきた。
3人が同じクラスになったのは初めてじゃないか?
公平は扉の方に目をやって、ニッコリと笑顔で待ち人の所に向かった。
「なんなのよ、その鬱陶しい顔は」
入れ替わりに麻琴が隣の席に座った。
麻琴の席が隣なのだから、座るのは当然なのだが、発してくる言葉はいつも通りトゲトゲしい。
麻琴の両親は今離婚話しの真っ最中だとか。
別れたい母親に父親が頭を下げてきているらしい。
「会社での立場だとか世間体だとか、在り来たりな事言ってるけど、どーせ外の女に捨てられたのよ。でも、ママはやり直す気がないって調停開くつもり」
あの日から数日して、麻琴はさっぱりした様子で母に報告してきた。
母は出会った頃から麻琴の身体にアザが見え隠れしているのを知っていた。
治る前に新しくつくアザを不信に思ったが、麻琴が話したがらないからと深く聞くこともしなかったようだ。
ただ、家に居ると母親に外に行くよう言われ、家に居たくても居られなかったようだから母はウチに来るように言ってあったのだと言う。
「なによ?芽衣さんが居ないからって拗ねてんの?……ガキ」
通常運転に戻った麻琴からはヤリのような言葉が降ってくる。
こいつが震えて泣いていたなんて……いじったら言葉じゃなくて実力行使で何かが刺さりそうだ。
「別に……そんなんじゃねぇよ」
「ま、1人が淋しいってんでしょうけど……今日はママも遅いって言ってたし、芽衣さんが留衣のお守りお願いって言うから、夕飯食べに行ってもいいけど」
最近の麻琴は[ツンデレ]に転向したらしい。
「夕飯なら俺も食べるぞ、ほい、留衣」
公平が手作りクッキーを俺の目の前の机に置いた。
家庭科で作った女子達からの差し入れらしい。
「いいでしょ、私も食べに行ったって」
「何だこれ?公平のだろ?」
「これは留衣の分、彼女達がお前に渡してくれってさ」
公平はニヤついて前の席に座り、自分の分と称して小袋をチラつかせて見せた。
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