6月・さわんな!

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昼や休憩時間には当たり前だが廊下や階段に生徒が多く往来する。 弁天高校の総生徒数は約480人。 男女比は4:6で女子の方が多い。 男子が学ランなのに、女子がブレザーで可愛い制服だと云われているからだ。 公平と共に校庭の一角にある芝生の広場に向かうため移動を始めた。 そこは陽当たりが良く校舎からは離れている。 一部の生徒に人気がある場所だが、低い垣根で囲われているとはいえ、職員室の正面にある。 なので、やましい行いは出来ない……昼寝くらいは出来そうだが。 廊下を歩いて階段に差し掛かると麻琴が追いかけてきた。 普段は教室で3人仲良く昼飯となるのだが、今日は弁当がない。 ついでに公平に誘われた。 「あ、麻琴誘うの忘れてた」 「もう、どこ行くのよ、留衣、お弁と……」 麻琴は言葉半分に倒れ込んできた。 俺達は階段を中ほどまで降りていて、倒れてくる麻琴を受け止めながらバランスを崩し、そのまま踊り場まで数段落ちた。 「ひゃっ!!」 「うわっ!!」「いっっ!!」 勢いよく落ちてきた麻琴と共に階段には他に数人の生徒がいたが、巻き込まずにすんだ。 俺達の居た場所が階段の中央だったのもあって、両端に避ける事が出来たからだろう。 落ちてくるモノを下に居る者は避ける。 その場は騒がしくなった。 3人が団子になって転がり落ちたのだから当たり前だ。 公平は額を擦りながら起き上がり、俺は麻琴の下敷きになっていた。 麻琴は青冷めて震えたまま俺にしがみついていた。 「いっ……て、大丈夫か?麻琴、留衣……」 最初に公平が腕を擦りながら声をかけてきた。 誰が呼んだのか教師が二人ほど、野次馬を掻き分けて近付いた。 「だい、じょう……ぶ」 なんとか仰向けになったままそう答えて返し、麻琴の肩に触れた……肩を軽く叩いてみる。 麻琴はガタガタと震えながら「お……お、され…………」と呟いた。
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