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麻琴は下を向いたまま手が白く見えるくらいスカートを握りしめていた。
泣くのを我慢しているように見えた。
俺はため息を吐くしかなかった。
公平の怒りも解るし、麻琴が何か我慢しているのも解ってしまったからだ……間に挟まるとしんどい。
公平が憤りを拳を握って抑えていると担任が戻ってきて、そのまま病院へと担任の車で移動した。
病院では3人とも検査を受けたため時間がかかった。
幸い頭を打った覚えもなく、脳の検査でも異常は見られなかったようで安心したが、麻琴は右足捻挫と両足膝の打撲、公平は左肩と腕の打撲と左足も捻挫していた……大切な顔も頬が少し腫れていて、身体の怪我よりもそっちに愕然としていたことは言うまでもない。
俺は両肩から背中を強打しただけあって少し腫れていたが、骨に問題はなかった。
だけど腰も打っていて、一応コルセットを着けていなさいと言われた。
確かに歩くのに腰は痛くて前屈みになっていたから助かり、大事に至らなくて良かったと息を吐いた。
検査を受けていると公平の母親がバタバタとやって来た。
麻琴の親とは連絡がつかないと担任が車の中で困っていた。
「仕事中は携帯持てないから……私は大丈夫です」
麻琴は平静を保って答えた。
「間君のとこは、なるべく早く来るって言っていたから」
と担任が告げてきたが、母は今県外にいるはずだ。
[なるべく早く]とは、『キノサキ』と来るのだろう……複雑だ。
3時間以上病院にいて、麻琴は担任と、公平は母親と帰宅仕掛けた時、ガタガタと病院の自動扉を抉じ開けて慌てた母がやって来た。
「留衣!」
俺の姿を目に慌てた声を発して、薄く化粧をし、カジュアルな服装でヒールを鳴らして駆けてくる。
その後ろに人影が見えた。
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