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公平の不機嫌な様に気付いたが、構う事もなく城崎の車に乗り込んだ。
車中は無言……と思いきや、母の質問攻めやらそれに相打つ城崎の声で俺はイラついていた。
麻琴は終始申し訳なさげに俯いていた。
「もうビックリなんてもんじゃないわよ、階段から落ちたなんて聞いて心臓止まるかと思ったよ。本当に打撲だけ?他に痛いとこはない?留衣?」
と自然体である母の問い掛けに、無言で返す俺の様を「はぁ……良かった」と母は肯定と受け止めて安心したようだ。
「芽衣、明日になればもっと別の症状がでるかもだぞ。明日は学校、休ませたほうがいいんじゃないか?」
お前が言うな。
「勿論そのつもり!麻琴ちゃんも休みなさいね?お母さんに、連絡つけられる?今日も遅いんでしょ?ウチで休んでいなさいね、ね?」
城崎はウチに向かって慣れたように進む。
昨日初めてウチにきたはずだろ?
なんなんだ、こいつ。
「ちょっと、タバコ吸わないで。留衣と麻琴ちゃんがいるんだから」
母は運転中の城崎の手から、慣れた手付きで取り出したばかりのタバコを奪う。
「ん?悪い……じゃ、それ開けてくれ」
と変わりにペットボトルのキャップを外して渡してやる。
その仕草に、イラつく。
なんだ、こいつ、母まで、なんでこいつの世話なんか……。
俺のイライラは顔に出ていたはずだ。
ミラー越しに城崎がチラ見してくるのが解るから、わざとらしく視線を反らし、車窓の外を向いてやった。
城崎はそれと解らないくらいに〈クスリ〉と口元を上げた。
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