7月・芽衣の優雅な1日

2/12
前へ
/145ページ
次へ
身体の痛みは2週間ほど続いた。 俺は3日間学校を休んだが、公平と麻琴は2日後には登校し、休んでいた俺の為にノートを録って家に来た。 「二人とも大丈夫なの?無理しちゃダメよ?」 「平気です、芽衣さん。留衣は大丈夫ですか?」 「うん、丈夫に産んでるからね。夕飯食べて帰るでしょ?私、頑張るからね、食べてって」 麻琴は母に向かいまだ謝り足りないとでも思っているようだった。 「芽衣さんの手料理楽しみです」 努めて明るく振る舞っている様子が声色から判ってしまう。 しかし、母の手料理を食べた事がないとは……後の反応が楽しみなのはこっちの方。 驚け、母の料理は大味だ。 幼い頃によく平気で食べてたなと、俺は俺を誉め称えたい。 リビングのソファーで呆れ顔を向けていた俺の前で、公平は無言でじっと母を見ていた。 「どーした、公平?」 「留衣、あいつ……いや、確か、芽衣さんの手料理、久しぶりだな」 「ああ、帰ってきてから3日、ずっと3食出してくれるんだが……大量に作るから胃薬が必須アイテムだ」 密かに忍ばせている胃薬をポケットからチラつかせて見せると、公平は「プッ!」と噴いて笑ったが、言い掛けた言葉の続きが気になる。 聞きたい事は判る───『城崎』の事だろう。 3日前、俺達を自宅前で降ろした『城崎』は「お茶くらい出すわよ、無理言ったし」という母の言葉にのって「じゃ、飲んで帰るかな」と家に上がってきた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加