7月・芽衣の優雅な1日

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「なんだ、それ!」 俺はその事実に声を荒げて突っ込んだ。 俺の知らないうちに二人は母と簡単に連絡が取れる状態にあったのだ。 「当たり前だろー。真っ先に芽衣さんに教えたし、はぁ……何してっかなぁ」 公平は天を仰ぐように上を向き、大きくため息を吐いた。 「だから、仕事でしょ?なんなの公平、今日は彼女は?あんた、彼女の事大事にしなさいよ」 麻琴の言葉に公平はジロリと目を細める。 平日の今頃、母はきっと俺の作り置いているご飯を温めて食べ 「昼寝してるって……たぶん。母は大概夜中まで作業してるから昼寝しなきゃ持たねぇし」 俺は少し焦って公平の不機嫌が増さないように、母の行動パターンとおぼしき事を話した。 前のように公平が麻琴に怒鳴るトコを見たくない。 「ふーん」 公平は納得したのか気のない返事をして机に頬杖をつき、窓の外を向いて麻琴から視線を逸らした。 二人の[母との繋がり]については追求しない事にする。 それより、二人が険悪になる方が今は避けたい事実に変わった。 麻琴は公平の態度に眉間にシワを作ったが、それ以上何も言わなかった。 母の事に関して二人は特別仲良くはなく言い合いはするが、険悪という事はない。 自己申告だが、互いに母を好いているのだ。 その部分は俺としてはあまり良い気はしないが、母が嫌われるよりはマシだ。 それに何より母が笑顔でいる。 だから多目に見ている……つもりだ。 だが、それは[本気]の[想い]ではないと俺が思い違いをしていると、知らなかったからだと後で気付いた。
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