7月・芽衣の優雅な1日

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その車はわりと静かに隣を行き過ぎて止まった。 見覚えのある車に暫し目を向け行き過ぎようとすると車窓が降り、「ちょうど良かった、留衣君」などと覚えのある声が気易く掛かってきた。 途端に嫌な顔を向けてしまう。 城崎はクスっと笑い「芽衣のとこに行くとこなんだ、乗せてってあげるよ。彼女……麻琴ちゃんも一緒にね」と、笑顔で話し掛けてくるヤツに俺はぶすったれた顔しか向けられない。 「別に、いい。もうすぐそこだから」 「そう?でも俺が困るんだよな。ここで息子に気付いたくせに放置したのかって俺が芽衣に怒られちまう。それに、麻琴ちゃん、まだ足痛いんだろ?……乗れよ」 「私は平気です。気易く名前、呼ばないでくれます?」 「ぷっ……くっくっくっ……ま、まぁ、いいから、乗れって」 城崎は何が可笑しいのか押し殺すように肩を震わせて笑い、強制的に俺達を車に乗せた。 押し切られた。 後部席に座った俺達に城崎は半笑いで運転を再開させる。 「タイミング良かったなー芽衣に頼まれた物持って行くとこなんだ」 革張りシートのセダン車、高そうなスーツにブランド物だろう腕時計……こいつ、以外と金持ちだな。 こいつを見るたびに思う。 カッコいい……ムカツク。 「しかし、ホント……いや、二人は付き合ってんの?」 は?! 城崎がバックミラー越しに話し掛けてきた。 「いいねぇ、留衣君は芽衣に似てるな」 「いや、違うし!!」 「付き合ってませんけど!!」 何を言い出すのか、二人して全力で否定した。
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