7月・芽衣の優雅な1日

8/12

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
ははは……などと声を出して笑い出し、「仲良いねぇ……くっくっくっ」とハンドルを握りながら暫く止まらなかった。 何がそんなに面白いのか、こっちはイラついて仕方がない。 「担当さんって頻繁に作家のとこに足運ぶんですね。前の方はそうでなかったみたいですけど?」 麻琴もイラついているのか、いつもに増して刺々しい口調で目を細めてさえいる。 俺が思っていたことと同じ事を思っていたようだ。 「ん?ああ、今はね。芽衣にとって忙しい時期だし、しっかり仕事して貰うために俺はフォローを欠かせないんだよ」 城崎は楽しげに言うと家の前で車を止めた。 「じゃ、これ、芽衣に渡しておいてくれる?これから別の仕事があるから上がって行けないんだ」 ニヤリと口元だけを上げて俺にむけてビニール袋と書類袋を差し出してきた。 母に会って行くと思っていたからホッとした表情が出ていたのだろうか、笑う城崎にバツの悪い顔を向けてしまうと、またも声を押し殺して肩を震わせる。 気に入らない!! 少々乱暴気味に引っ付かんで麻琴と車から降りた。 「じゃ、またな留衣君」 にやついた顔で城崎はまた静かに発車させて去った。 運転しながら笑っているのが想像できるとイライラは増す。 「おい!何でアイツの車で帰ってくるんだ?!」 家の前で城崎の車を睨みつけていると公平が慌てて駆けてきた。 「公平……そこで会ったんだよ。お前、早いな、もう別れてきたのか?」 「ちゃんと送ってきたんでしょうね?」 俺と麻琴の問いに公平は答えず苛立ちを表して「アイツっ……!」と呟き、姿の無い車を睨みつけていた。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加