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公平は居なくなった城崎の車を睨みつけるも、踵を返して家のドアに向かった。
後を追うようなかたちでドアに向かい、追い抜き鍵を開けて中に入ると、いつも通り家の中は静かで……
「っ?!母?!」
母が自室から半身を投げ出し、うつ伏せて倒れていた。
「「芽衣さん?!」」
慌てて3人で近付くと母は油切れの機械仕掛けのように腕を上げて俺の手首を掴んできた。
「……る、い……腹、減った」
……生きているようだ。
「何やってんだよ!飯あんだろ、食えよ!!」
思わず腕を振り払ってしまった。
安堵の息を吐きつつ母の腕を掴んで引き連れてキッチンに向かう。
母は大人しく引きずられる。
母の腕は細くて、軽い。
そういえば、朝、声を掛けたが返事は無かった。
カウンターテーブルには構えておいた朝食と昼食がラップを掛けたまま放置されていた。
とりあえず、水を与えて昼食を温めてやる。
「何やってんだよ、丸1日食ってねぇじゃねぇか!」
夕べ、食事の後直ぐに部屋に引きこもった母とは朝から会っていなかった。
仕事中に邪魔をすると機嫌が良くないので、なるべく部屋には入らないようにしてある。
「だって、間に合わないから……眠いし……動けなくて」
水を飲み干しながらモゴモゴと言い訳をしてくる。
こんなんでよく『自立する!』などと言えたものだ。
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