8月・HAPPY[BLUE]BIRTHDAY

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「すご……」 ああ、そうだな、凄い。 麻琴の感嘆する声に俺は脱力して項垂れた。 「きれい……」 ん?きれい? アホか、この部屋のどこが[きれい]なんだ? 城崎のやつ、よくこの部屋に入って行けるな……そう思い、改めて母の部屋に目を向けた。 「おぉう、これ待ってた。ありがとー」 母は部屋の真ん中で椅子に胡座をかき、城崎からビニール袋を受け取って喜びの声をあげたが、どことなく元気がない。 「んー……後どれくらい?少し根詰めすぎじゃねぇか?何日か延ばしてもいいぞ、締め切り」 「うー……いや、いい。へーき、明後日には仕上げる。細かいのは上げたから確認してくれる?」 母はへらりと力なく笑顔を作った。 城崎は「はい、はい」と二つ返事で机に向かい紙を数枚手に取った。 母が小さく息を吐く──ここまで疲れている母は珍しい。 延ばせる締め切りなら延ばして貰えばいい……そう思って俺は顔をしかめた。 「ねぇ、留衣、あれって天使かなぁ?」 麻琴が俺の隣でヒソヒソと話し掛けてきた。 その言葉で初めて部屋を占領している物に視線を移す。 窓一面ほどのキャンパスには其々青1色と緑1色が塗られ姿の違った人型が描かれている。 一つは双翼、もう一つは片翼の人型だ。
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