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「おはよー留衣君、芽衣は?」
午前10時、玄関を開けて出迎える。
「部屋から出て来ないけど?」
爽やかな雰囲気を纏って現れた城崎に不機嫌な顔を向けるも、城崎は「あっ、そ」と笑顔を張り付けて返してくる。
今朝、母は朝食をとりに来なかった。
が、仕方ない、今日は約束の『明後日』なのだ。
今日を過ぎれば籠る事もないだろう。
ちゃんと昨日は夕食、夜食を与えてある。
城崎の姿を見つけると、今朝も普通に朝食を済ませて寛いでいた公平が俺の部屋で立ち上がって睨んだ。
それすら視界に入っているのに城崎は「やぁ、おはよ」と笑顔を作って母の部屋に向かう。
城崎がドアに手を掛けようと腕を伸ばした時、勝手にドアが開いた。
ゆっくりと開いたドアからゆらりと母が姿を見せる。
「……はれ?きの……きさ……?る……でき△☆□○……」
城崎の後ろから覗き混むと、母はへらりと顔を緩め、呂律の回らない口調で何か発した途端に倒れ混み城崎に支えられた。
「母?!」「芽衣さん?!」
慌てる俺と公平とは違って城崎は落ち着いていて、「はい、はい、よく頑張りました」と言って母の背中を軽く叩き、クスリと漏らして軽々と母を肩に担いだ。
「相変わらず軽いやつだな……留衣君、ベッド借りるよ」
担がれた母はぐったりとしていて、城崎はクスクスと笑いながら俺の部屋へと進み、俺のベッドに母を寝かせる。
「まったく……汚ねぇ顔。風呂に入らず絵に没頭って、女じゃねぇな」
柔らかな笑顔で肩を震わせ、ボヤきながら城崎は母に布団をかけて母の髪を撫でた。
母はすーすーと寝息をたてて気持ち良さそうに眠っていた。
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