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優しく母を見つめて、静かに部屋から出てくる城崎に呆然としてしまう。
「さて、留衣君、今から搬出のために作業員が来るから、芽衣の部屋、ちょっと片付けてもらえる?」
そう言って城崎はスマホを片手に母の部屋に入っていく。
俺は弾かれたように慌てて母の元に近付き、本気で爆睡しているだけである事を確認して……ホッと息を吐く。
そして夜でもないのに部屋のドアを閉めて改めて母の部屋を見た。
公平が母の部屋の前で立ち尽くし、中を睨み付けている。
その横から部屋に進んでいくと「ああ、じゃ、頼む」と城崎が通話を止めるところだった。
城崎は満足気にキャンパスを眺め、机に置いてあるクリアブックを手に取った。
「……おい」
「ああ、床だけでいいからな。3、40分くらいで来るから、そうだなぁ……ベッドのゴミも捨てといてもらおぅかな」
にっこりと笑って指示を出してくるヤツに向かい、俺は公平同様、睨んでいた。
なんでコイツは上から目線なんだ?
ここは母の部屋で、俺と母の家だぞ!
無言で突っ立つ俺にパラパラとファイルを捲っていたヤツは手を止めて息を吐き、顔を向けてきた。
「ちょっと外に出るか……話しでもしようか?」
城崎はクリアブックを片手にタバコを取りだし、ニヤリと口元を上げた。
その顔を殴りたくなって、拳を握りしめる。
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