8月・HAPPY[BLUE]BIRTHDAY

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城崎は笑う事を止めた。 大きく息を吐き、タバコをくわえて、吐き出す。 僅かだろうけど、静かになった。 「ふん……契約出版社の担当編集者っつっても、納得しない?」 柔らかな声で問いかけてくる。 俺達は無言で応えた。 すると城崎はまたもクスリと漏らして「元恋人だよ。芽衣とは高校の時付き合ってた」と諦めたようにさらりと言ってのけた。 俺の心臓が跳ねた。 「別れてから仕事で再会するまでは互いに連絡は取ってなかったよ。進学先も違ったし、忙しくしてたしな……満足?」 仕方なく、といった感じで城崎はため息混じりの煙を吐いた。 何故だろう……なんだか、哀し気な目をしている気がして、その目は俺を見ている。 コイツ……まさか、な? 「あんた、今でも」 「どうかなぁ」 公平の問いに重なるように発した言葉に再び心臓が跳ねた。 「うーん……確かに芽衣はいい女になってるけど、あれだよなぁ……うーん……ま、昔と変わらず可愛いとは思う。作家として尊敬も出来るし、好感は持ってるよ」 飾らず言葉を連ねる。 城崎はやっぱり[大人]だ。 だけどその笑顔が[作り物]にしか見えないのは何故だろう? 「もういいか?留衣君、そろそろ取り掛からないと作業員が来ちまうよ?」 終わりだ、と壁を張られたように、城崎との対話は強制終了させられた。 その顔にはもう[哀しみ]は見えなかった。
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