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母を[可愛い]と言う。
公平も麻琴も同じ事を言うけど、俺にはそれが理解出来ない。
親を[可愛い]とは思わないものだけど、俺にとって母は我儘で、気紛れ屋で、気が強くて、到底[可愛い]とはかけ離れたモノだ。
まだ聞きたい事はある。
納得してはいないけど、自分の中の疑問が何なのか頭が回らない。
城崎もそれ以上は話す気がないように見えて、俺は黙って玄関に向かった。
「……そんなに睨むなよ」
城崎が面倒くさげに吐いた。
振り向くと公平が突っ立ったまま、まだ城崎に対峙し続けている。
「お前、[公平]だっけ?俺はお前と張り合う気はないよ……無駄だからな。お子ちゃまと遊ぶ時間はないし、[ゴッコ]遊びに興味もない」
「遊びってなんだよ?!俺はしんけ……」
「無駄だよ。お前じゃ芽衣の相手は無理だ……睨むなよ、お前を見てるとイラついてくる。さっさと諦めろ、芽衣はお子ちゃまが相手の出来る女じゃない」
無表情にも見える冷めた顔で突き放すように放った台詞に、公平は鬼の形相で握った拳を振り上げた。
「公平!!」
俺は焦ってその腕を掴んだ。
と同時に城崎のスマホが鳴り出し、城崎は平然とした態度のまま着信をとり、チラリと横目で公平を見て口角を上げた。
「城崎です、おはようございます……」
仕事相手だろうか。
さっきの冷たさはどこへやら……穏やかな口調で話し始める。
公平の腕は震えていた。
俺から腕を振り払ってほどき、スタスタと大股で歩き出し、「公平!」と呼び掛ける俺の声を無視して城崎を睨み付け、その横を通り過ぎて行った。
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