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城崎の言った通り、その後20分程で作業員らしき人が二人、トラックで家に来た。
目につく紙クズだけ拾い、散らかっていた部屋を見映えよく、床にスペースがあるように繕った。
母の描いたキャンパスを丁寧に梱包して運び出し、城崎と二言、三言話して頭を下げて呆気なく帰っていった。
「じゃ、また明日な」
「明日?!」
「聞いてないのか?明日、お前達の運転手に駆り出されてんだよ。ったく、人を何だと思ってんだかな……ま、この仕事が早く片付いた褒美ってとこかな。心配すんな、会場まで送るだけだ」
ニヤリと笑い、肩で息を吐く。
呆気にとられた俺を眺め、寝ている母を起こす事なく城崎は片手を振って帰った。
言葉が出て来ない。
後に残った俺は物凄くモヤモヤしていた。
アイツが母の何なのか知りたかったはずで、想像していた通りとても近い存在だった。
今は、違うと言っていたけど、ひょっとして……いや、まさか……いやいや……知りたくない事が頭に溢れてきた。
それは知りたい事でもある。
城崎の後、入れ替わるように委員の仕事で学校に行っていた麻琴が帰って来た。
朝食の時は制服だったのに、私服になって現れた事に違和感も持たず出迎える。
「ふーん……芽衣さん、仕事あがったんだ……見たかったなぁ」
残念がる麻琴に、13時に近い事に気付いた俺は慌てて昼食を構えてテーブルに着いた。
自然と麻琴に食事を構えてしまう自分に何も思わないのが不思議だが、それを当たり前に受ける麻琴も麻琴だろう。
母は夜中まで起きてこなかった。
次の日、俺の誕生日がやってきた。
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