8月・HAPPY[BLUE]BIRTHDAY・2

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ブチブチと玄関先の雑草を千切りながら考えてしまうのは、母と城崎の事。 俺は[父親]の事を何も知らない。 知りたいと母に聞けばいいだけの、それだけの事だけど、何故か聞けずにずるずると聞かずにいる。 〈……聞いてみようか〉 俺は立ち上がり、踵を返して家の中に入った。 「ふぁぁ……」 欠伸を人目から隠すようにして、片手でタバコに火を付ける。 「4時間しか寝てないんだ……他にもお抱えの作家が何人かいるもんでね。しかも仕事中……何の用だ?お迎えは午後の約束なんだが?」 城崎は[やれやれ]というように、煙を吐き出した。 機嫌が悪いわけではないようだ。 柔らかい、落ち着いた声で笑みを浮かべて俺を見る。 出版社の近く、城崎の指定する小さくも雰囲気の温かい喫茶店内。 俺は母の部屋から城崎の名刺を探しだしてコイツを呼び出した。 やっぱり、母に直接聞けない。 泣いてしまうかもしれない……そう思うと、聞いてはいけないと頭と身体が拒否する。 もっと幼ければ簡単に聞けるだろうなと思う。 聞かなかったのは[その必要がない]と思えていたからだ。 仕事中だと言うくせに、城崎は軽く俺の誘いに応じてくれた。 昼食をとるついでだと言って、連絡すると11時にこの店を待ち合わせ場所にしてきた。 あいにく、俺の腹は[朝食]で膨れているので、食事は注文せずドリンクだけを頼んだ。
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