44人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
席に着いてから注文をして、目の前の水の入ったグラスと城崎に目を向け続けた。
城崎は横を向いて煙を吐き出す。
会話も始められず沈黙の中、頼んだ物が運ばれ、城崎は食事に取り掛かる。
「ホントに食べないのか?遠慮すんなよ、今日は誕生日なんだろ?奢ってやるぞっつっても、お前ガキだし、大人の役目だけどな」
嫌味っぽく聞こえる台詞も冗談のように伝わる。
「朝飯でまだ腹一杯だから……いい」
運ばれてきたクリームソーダに手を伸ばすと城崎は〈ふっ〉と軽く笑った。
「何?」
「いや……親子だな、とね」
その言葉にドキリとして手が止まりかけた。
無言のまま、城崎が食べ終わるまでズコズコとソーダを飲んだ。
観察していてもコイツはカッコいいと思う。
見た目や仕草がいちいち[大人]で、手慣れていてムカツクが、羨ましい。
食後の珈琲が運ばれてくると、再びタバコを取りだし「で、何なんだ?」と話しを促してきた。
途端に心臓が早鐘を打ち出す。
聞いてもいいだろうか?
コイツに聞くのは間違いではないだろうか?
呼び出すべきじゃなかった……?
頭の中が忙しく自分の行いを振り返させてくる。
〈コイツが知らないと言ったら……〉
「ふん……」
城崎は唇を結ぶ俺を見て困った素振りをした。
そりゃそうだろうな、呼び出しくらって何も喋らないんじゃただ迷惑なだけだ。
テーブルに置いた飲みかけのグラスをじっと見つめ続ける俺に、呆れたのか、タバコを消して息を吐く。
「お前、芽衣に聞いたのか?」
心臓が跳ねて、顔を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!