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新学期──残暑厳しい中、冷房の効いた部屋が恋しい。
俺の部屋で休みの後半を過ごした公平は意外と直ぐに立ち直った。
「やっぱ俺、芽衣さんが好きだ!」
と、2、3日後にはヘラヘラと母と共にテーブルに着き、明るく食事をしていたくらいだ。
微動だにせず部屋の角に居座る姿は面白かったのだが。
「公平、ウザい」と麻琴に攻撃をされても「ふふん、麻琴にはわからんよ」笑顔で平然とする。
もうどーでもいいよ……。
母は僅かに戸惑っていたけど、変わらない態度を見せてくる公平を変わらない態度で迎えている。
変わったのは公平のスマホ。
壊れたわけではなく、鳴らなくなったのだ。
「ん?ああ、女友達全部切ったんだ。早く大人になりたくて、寄ってくるコと付き合ってたんだけど、もうそれも必要なくなったし、所詮俺は連れて歩くだけのモノだったんだしな。皆、呆気なく去ってったぜ。元々[本命有り]って伝えてたしな」
明るく話す公平に返す言葉がなかった。
本命がいても付き合える関係って何?
俺にはまったく理解出来ないことだと思った。
公平が何日間か夜中に背を向けて泣いていた事を知っている。
それは母のせいで、なのだろうから気付かない振りをして目を閉じていた。
俺には[本気]で人を想った事がないから、公平の想いは理解出来ないでいる。
本気で人が好き……いつかわかるだろうか?
解れば母の事が少しは解るだろうか?
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