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「母はそんなに大したことないぞ。まともに家事出来ないし、殆ど引き込もってるし、気まぐれだし……」
「「そんな事ない!!」」
俺のため息混じりの台詞に二人は息のあった反論を返してきた。
「芽衣さんは気遣いの出来る大人の女性よ!ケガしてることに気付いても追及してこないし、それどころかこっちが言いたくないことは聞いてこない、でもちゃんと私を見てくれる!」
「芽衣さんは黙って側に居てくれるだけで落ち着ける癒しを持った人だぞ!ガキのような我が儘にも笑顔で付き合ってくれるし、何も言わなくても包み込んでくれる優しさを持ってる!」
「「留衣は芽衣さんの事判ってない!」」
二人は声を荒げて抗議してきた。
その様に目を丸くしてしまったがふと疑問に思う。
「……お前ら、そんなに母と接してないよな?」
という俺の言葉に二人は静止した。
常に家にやって来る二人は俺が居ない時に家に上がることはないし、母とは一緒にいられないはずだ。
何度も言うが[母は引きこもり]だ。
仕事で食事や休息、風呂、トイレ以外は殆ど自室で絵を描いている。
今だって食事が済むとさっさと部屋に戻って出て来やしない。
俺が外出の時は大概二人は一緒にいたりするし、母が外出するのは仕事で打ち合わせとか、昼間に散歩に数時間出掛けるくらいだ。
平日の真っ昼間に散歩してる母と遊べる訳がない。
二人とも学生なんだから。
「「………………」」
「いつ、母と、仲良くしてるんだ?」
次第に雲行きが怪しいと感じたのか、俺の目が細くなって見詰める先で二人は大人しく座って互いの顔を背けた。
開いたままのドアの向かいの部屋のドアが開くのも気付かなかった。
水彩絵の具が飛び散ったのか、Tシャツを色彩色豊かに染めた事を詫びに俺の部屋にやって来た母は
「母は俺の母親だ、近付くな!」
と怒る俺を見てビックリして
「……うん……判った……ゴメン」
と呟いた。
「ええっ?!」
母の呟きに驚いた俺が戸惑って狼狽えると公平と麻琴は
「「マザコンが!」」
と声を揃え、舌打ちをしてボヤいた。
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