敗者は何度でも立ち上がる

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今日のミッションも滞りなく終わりに差し掛かったアフタヌーン、残すは此処からの脱出のみとなったビルの屋上でオレはふと思った。 「今日のおやつはあんみつが食べたいぜ」 今の気温は21.2℃気圧1014hpa高度160ft風の強さ凪、地上までの高さ35m 後はこの一本のスタティックロープを使って地上にエスケープするわけだが、そりゃそうだ、エレベーターは勿論、非常階段でさえ今日、防犯カメラが睨みを利かせていやがる、そう、足跡を残してはならない鉄則がある、もししくじれば‥‥。 否応なしに昨夜の事を思い出す。 消えていった仲間達の事を。 「犬の寿命は短いか」 別に生き急いでいるって訳じゃない、でも貴公がそう言うのなら‥‥フッ、すまないな心配かけて。 ああ、そうだな、あんみつは貴公と二人で行くことにしよう、 このミッションが終わったら―― 「しまった」 絶対口に出してはいけない言葉、そんな禁句が犬共の間にはいにしえの昔から伝わっている。 例えば、鰻に梅干しは一緒に食べてはいけない、天ぷらに氷水も、エブリスタで人の悪口を書くこれ絶対ダメ、他にもいっぱい有るのだが今回は‥‥おっと今は説明している時では無いな、なにしろもう既に、 オレは今、落ちている。 屋上に設置されている丸環にスタティックロープを結束無しで返して通す、二本になったロープを地上まで届かす、それにエイト環を接続、ツインロープ方式で下降を始めて直ぐの事だった、エイト環とハーネスを繋ぐカラビナがぶっ壊れやがった。 グランドフォール寸前、無意識にもがいた手が窓枠にひっ掛かって墜落を免れた。 だが、下降する手掛かりも無く、生きる道は窓の中の人に助けてもらうしか術はない。 終わったのか、オレは。 住人に助けられそのまま不法侵入で連行ENDか、力尽き墜落ENDか。 どっちにしろ時間はあまり残って無いようだ、汗で滑り始めた手指の位置を、一回入れ換えた、次はもう無理だと思った時だった。
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