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「なるほどな、図書室って名前に嘘偽りは無く」
だが第一印象は、この薄暗い室内で本でも読んでいたならまずオカンに怒られそうな空間。
だからこそ、何か有るな、オレの超えてきた死線の代償、無数についた傷どもが疼きやがるぜ、焦るなよ、先ずはスタッフ、ゲストにホスト併せて4、50人は居る者達に紛れ込む、殺気を消せ、一般人になりすますんだ。
「いらっしゃいませ、こんばんは、チケットかお名前を教えて下さい」
エブリスタスタッフだろうか、オレンジ色の認証カードをぶら下げた若い女性が対応した、意外に今日の客層は年配の方が多く、ホストの方が若い印象を受けた。
「こんばんは、gorochingと書いてゴロチンと読みます、え?本名あはい、、、」
よ、よし、完全に一般人に見られたな、潜入成功だ!
チケットと交換でビールを貰い、一口二口と喉を鳴らせば、イベントの始まりはエブリスタが制作に大きく関わる、アニメRS計画のPRがスクリーンに映し出された、司会者はエブリスタの取締役の方らしいが、特に若く感じた、本当に若い人達の力でこの会社は運営されているらしく、大したものだと思う一方、オレも年取ったかな、なんてちょっとおセンチに浸ってしまった。
PRとエブリスタの今後の経営指針の告知なんかが終わると、暫くフリータイムになった、チャンスだ、なんとかエブリスタスタッフと接触しなくては、オレは辺りを物色しながら室内を進んだ。
所狭しと飾られる本、書籍化された現物はやはりカッコいいな、誰しもが憧れを抱くだろう。
エブリスタへのご意見ボードとメッセージ、酒の肴のサービス、PCで新フォーマットのデモなんかもやっていた、そして。
「いた」
それは、オレンジ色の認証カード、明らかにエブリスタスタッフ、床に直に座り込みビールを飲みながら様子を窺っていた(サボってた?)男を、オレは見逃さなかった。
徐に彼の前の空いている空間、体操マットのような席に腰を落として、黙って暫く飲んでいた、すると。
「エブリスタの作家さんですか?」
「あ、はいそうです」
掛かった。
彼はスマホでの執筆操作環境や不満点等をオレに訊いてきたのだった。
名をKマイさんと言った。
うお~って つづく
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