雨で霞む水平線の終わりには、あああ

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大きな水槽を眼下に見渡しオレは唖然とした。 これは‥‥実験プラント、いったい何を創っているんだ。 緊張感が高まる中、スタッフが(洗脳、または大事な者を人質に捕られているな)各水槽の中の見たこともない魚共(多分遺伝子改造された合成生物だ)それに餌をあげる様子が見えた、餌は何なのだろうか、見た目はホウレン草に似ている(思うにマンドラゴラか何かじゃないかと推測した) バックヤードに似たメンテナンスゾーンを足早に抜ける、ヤツは何処だ、汗が吹き出す、そして見つけた。 覗いた照準器の真中に司会者の男の顔がニヤリと笑う。 ダメだ、ここではうてない(携帯禁止)騒ぎになってしまう。 安心しきってウミガラスの講釈を語り始める司会者、そしていつの間にか周りは群衆で囲まれていた。 しまった、罠か! オレは走った、ムーディーな照明に酔いしれる平和世界の住人達を避けかわし、意識は二人次元の彼方を向く若いカップルを突飛ばし、厚さ25㎝の極太アクリル窓に激突すれば中のシュモクザメが血相変えてイトマキエイを追い回し、それに驚いたカタクチイワシが水槽の外に飛び出るばかりに跳ね回る姿を見たウミガラスがまた餌の時間かと騒ぎ出す。 期待させてゴメンな。 混沌と化した水族園は、さながら朝のラッシュ時の新宿14番線ホームの様に鬼気迫るものが有った、もはやウミガラスの講釈を聞いている者など誰もいない。 「カラスに油揚げさらわれたかい?」 おのれ野良犬め、とヤツの断末魔が聞こえた気がした。 「犬は生魚は食わんよ」 でも甘い物は割りと食う、おみやげ物を2つほど買ってカオスを後にした。 もうここまで来れば大丈夫だろう。 オレは巨大な観覧車の足元に来ていた。 ゆっくりゆっくりと時計と逆に進むゴンドラを見上げた、時間が遡ってゆく妄想にとらわれる、もし本当にあの時に戻れたとしたら‥‥フッ、止めておこう、そんなのオレじゃ無い、貴公も思うだろう、オセンチなぞ似合わないって。 今度は時間が進んでゆく妄想に駆られた。 オレがこの大輪の花の最上部で命を懸けたやり取りをする絵が脳裏に写る。 オレは驚きを隠せなかった。 「そいつは、ご機嫌な夢だったな、何にせよゴンドラに捕らわれていたのは貴公だったのたから」
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