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流星は堕ちず、ただ航る
20160507
「よう、久し振りだな、そうだオレだよ、ゴロチンだ」
オレを通り過ぎた女性に、思い出したように会いたくなって、そのもとを訪ねた、ミッション前の気まぐれだ、別に約束も、他意もないさ。
なんだ幽霊にでも出くわしたって声を上げやがって、そんなに驚く事無いだろ、フッ、いやスマンな。
まぁ確かに、いつこの身が消えても不思議じゃ無い生業だ、オレは勿論、貴公も覚悟は出来ている筈だろ‥‥
そうだ、オレはもう何人も消えていった仲間を見てきた、巨大で不確かな理想と言う世界に踏み込んで、現実と言う儚い思いを知った者は、皆、道を失う、何をしていいのか分からなくなる、そして消えて行く。
ただ居なくなるだけならまだいい、抗ったその相手が、自身と知った時、耐え難い苦痛の末、闇に堕ちる者さえいるのだ、敵も味方も、もういない。
オレだって、何度も‥‥
ん、なんだ、別に怖がらせている訳じゃ無いさ、事実を言ったまで、だ‥‥
え?お、おい、なんだ、ちょっと待て、なんでそんな悲しい表情をする、あれ?目にゴミでも入ったの?って訳じゃないよな、は、腹減ったのか、やだなあ、この食いしん坊!
‥‥あ、あれ
‥‥ご、ごめん、
そんな女じゃ無いと思っていたんだ‥‥すまなかったな、貴公を泣かすつもりなど無かったんだが、悲しませてしまった、な‥‥
それ以上は何も言わず、その部屋を出た。
まだ湯気の立つ、珈琲とカラメル、そして彼女の背中を残したまま。
女の涙には不思議な力があるな、有無を言わさず勝ち負けを消し去る、絶対的な魔力みたいな。
時には、それを欲して欲望のまま、糖蜜を貪り罠にはまり、
時には、それを毛嫌い孤独に浸る事も、
そしてまた、それに救われる事もある。
求めれば離れ、避ければすり寄る。
まるで、口に出す前に消えてしまう、星にかける願いのように、最初から決まっている儚い夢のように‥‥
フフフッ、ならば、それを楽しんだらいい、逆らわずに、愛でてやれ、放っといたって無くなる訳じゃない、ちゃんと待っててくれているものさ。
敵わんね、
男である以上は。
本題に入ろう、別に堅苦しい事を言いたい訳じゃない、ただ貴公に感謝したいだけだ。
ありがとうよ
それだけが、オレと貴公に必要な一言、だと思ってな。
なあ貴公、今夜は一緒に星でも見ないか?
屋上にワインボトルを持って。
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