雨で霞む水平線の終わりには、あああ

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雨で霞む水平線の終わりには、あああ

20160402 波それは、生まれては死ぬだけの繰り返しを何十億年と続けてきた貴様の鼓動。 涙それは、灰色の空と鉛色の海の境界線を濁す雨が、オレの頬を伝うだけ。 たまに貴様の存在を感じると、やけにオレがちっぽけに見えて嫌になるぜ、フッ。 ああそうだ、オレは任務で海に来ている。 葛西臨海公園という所にある水族園でのミッションだ。 一般人に成り済ますのは以外に難易度が高く、同業者の目を完璧に欺かなければならない、少しでも怪しまれれば、それこそ太平洋の藻屑となるだろう‥‥ フフッ、安心しろ、またいつもと同じ楽しむだけさ。 オレはニヤリと笑い溟海の入り口に踏み込んだ。 薄暗い室内、巨大な水槽と言うよりは、透明の壁の向こうに、多種にわたる様々な海洋生物が生きていた。 人間の業で俯瞰されるためだけに切り取られた世界を、住人は理解しているのだろうか、そして我々もまた‥‥ ああ、分かっている、先を急ごう。 暫くするとペンギンの餌やりをするという情報を入手した、罠かもしれない、だが行かない訳にはいかない、一抹の不安がよぎる、ターゲットの明確な位置情報は今だ知らされていない。 フェアリーペンギンという小っちゃいペンギンが餌を貰いに行列を作ってヨチヨチと行進して行く、オレはスマホのカメラで写真を撮ったり、水中を飛ぶように泳ぐ本気のイワトビペンギンに感嘆の声をあげたりして、大勢の人々の中に溶け込んでいる演技を完璧にこなした。 ターゲットはペンギンとは関係が無さそうなのでオレは先に進んだ。
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