異世界料理

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全身を冒険者の血で赤黒く染めた翼竜「タスクドラゴン」。その卵は産みの親からは想像ができないほど、光輝いている。まるで宝石の様だ。そして中を割ると、ぷるぷるとした黄身と白身が出てくる。なんと卵の殻だけではなく、中身まで光輝くのだ。黄金のような黄身と、水晶のように透き通る白身。その見た目から、「ジュエルエッグ」と呼ばれ、食用だけでなく鑑賞用としても高値で取引されている。 ある場所で、奇妙な花が咲いている。「ヘルドレイク」という名前で、近隣の村からも恐れられている植物だ。全長15メートルという巨大な花だが、なにせこの花は養分を得るために、周りの木々に触手を刺し、枯らすまで養分を吸収するのだ。更にその対称は動物とて例外ではない。辺り一面を地獄へと変える植物、それがヘルドレイクだ。しかしその花弁は森の養分を溜め込んでいるので旨味が熟成しており、噛む度に旨味と甘味が口の中に広がり、食欲を増加させる。更に茎は、生で食べると固さで歯応えが楽しめ、焼くことで柔らかくなり甘さが出る。 この異世界、「レアル」では、モンスター等を食材として調理し、食べるという文化があった。 そんな異世界料理を作り、客に提供する店があった。「異世界料理専門店 ドラング」。それがこの店の名前だ。そこは昼夜を問わず人がごった返し、テーブルには大量のモンスターを使った料理が並ぶ。キッチンでは、ジュエルエッグを熱したフライパン(それも50センチ程の)に落とし、温めていた。しばらくするとその上に切り刻んだヘルドレイクの茎を乗せ、菜箸で丁寧に包んでいく。その瞬間、卵と花の甘い匂いがキッチンを抜け出し、店の外にまで広がった。そして卵と茎を混ぜたものを、 綺麗に折り畳んでいく。段々と延べ棒の様な形へとなっていった。油を足しながら、フライパンの滑りを良くする。出汁を足しつつ、折り畳む。この動作をしばらく繰り返し、遂に完成したものを皿へと移す。土色をした皿の上に宝石の如く金色に輝く卵焼きが乗せられた。 「地獄花混ぜ宝石卵焼き、お待ち!」
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