異世界料理

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テーブルに置かれた料理を見て、客全員が感嘆の溜め息を漏らした。 「おぉ、これがジュエルエッグ…噂には聞いていたが、本物の宝石の様だ…!」 その言葉を聞いた店主は、頭に巻いていたバンダナを取った。まとめられていた金髪がふわりと元に戻る。 「見るのもいいけど料理なんだから食べてよ。熱々じゃないと美味しくないよ!」 テーブルに座った客は箸を卵焼きの両サイドに挟み、ゆっくりと動かし、一口大に取り出した。その色からは想像がつかないほど軽く柔らかい。中には緑色のものが見えた。ヘルドレイクの茎だ。 「では…いただきます」 客は恐る恐る宝石を口の中へと入れた。それを他の客が周囲でまじまじと見ている。口に入れた卵焼きを一度噛むと、その客は目を見開いた。 「う、う、うむぁい!」 うまい、と言いたかったのだろう。しかし余りの衝撃と口の中に食べ物を入れていることで、上手喋れなかったようだ。 「なんということだ!卵焼きの甘さと焼いた茎の甘さ、それがお互いを邪魔せずくどくなくなっている!それにまだ!」 もう一口放り込む。 「中には焼いた茎と生の茎が入っており、歯応えが良いアクセントとなっておる!」 その言葉と夢中で卵焼きを頬張る客を見て、店主はニヤリと笑った。 「お褒めの言葉、ありがとうございます」 すぐに皿は空になった。食べていた客、この村の村長は満足そうな顔をしていた。 「最高じゃったぞ、お主の料理。だが…これが最後になるとは寂しいの…」 客全員が先程の感嘆の溜め息とは違う、心惜しい溜め息を漏らした。 ニューク。彼はこの村唯一の料理人である。天才的な料理のセンスを持ち、このドラングも彼が経営している。 「いえ、ただ新しい食材と料理人としての修行をしてくるだけですよ」 今日はドラングの閉店日だった。理由はニューク自信がもっと上を目指したい。もっと旨いものを見付けたい。その為に旅に出るというシンプルなものだった。 「そうか…だが無理はするでないぞ。」 わかってますってと言いながら、ニュークは大振りの包丁と、リュックサックを持って裏口から出ていった。 「いってきます!」 危険なモンスターが周囲にいない平和な村「ロポポ村」。そこからニュークの旅は始まった。
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