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俺は、佐野と、ざわつく居酒屋のカウンターの片隅で、たわいもない世間話をしながら、酒を飲んでいた。
いつもなら、飲みながらテンション上がるんだが、今日は、ダメだ…。
原因は、わかってる。課長のあの命令と自分の中の押さえ込んでいた気持ちに気付いたからだ…。
「どうしたんだ、梶尾?…なんか、今日は、テンション低いな。」
佐野にも、俺の異変が、わかったみたいだ。
もしかしたら、佐野なら、いい答えをくれるかもしれない。そう思って、切り出してみた。
「…なあ、自分の中にある気持ちが、どんなものか、わからないとき、お前はどうするんだ?」
「わかんない気持ち?…あのさ、それって、恋愛関係の相談か?」
「そうなるのかなぁ…。」
そう言った途端に、佐野がニヤニヤしやがる。
「…お前、わかりやすすぎだわ。」
「何が?」
「惚けんなよ。課長のことだろう。」
「ど、どうしてそうなるんだよ!なんで、課長が出てくるんだよ!」
「ほら、そう言う風に、慌ててるのも、必死に否定するのも、そうですよって、言ってるようなもんだよ。本当、わかりやすすぎるって。」
笑いながら、佐野は、手元のグラスを空にした。
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