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佐野に言われて、俺は、ものすごく考えた。そして、自分の心に素直になることにしたんだ。
嫌いな相手ならともかく、好意を持ってる相手なんだから、素直にその気持ちは、受け止めよう。
自分が追うんじゃなくて、求められる立場の恋。それも、いいかもしれないと結論を出したんだ。
そりゃ、上司命令だなんて言い方されて、腹が立たないわけじゃない。だから、その点については、ちゃんと謝ってくれって、言うことにしたんだ。
「あの…課長。ご相談があるので、お時間作ってくださいませんか?」
「私にか…別にいいぞ。そうだな、明日、仕事が終わってからでいいか?」
「はい、よろしくお願いします。」
他人の目があるし、これくらいが、俺の限界。
翌日、朝、課長から、待ち合わせ場所を書いた紙をもらったんだが、その日は、午後から急な会議が入った。
会議の前、わざわざ、俺の席に来て、もしかしたら、約束の時間に間に合わないかもしれないが、待っていてくれと、一言残して、課長は、出ていった。
「見てたぞ、梶尾。直接対決すんのか?」
「対決か…。そうだね、俺にとっては、そうかもしれないな。」
「気負ってるね。」
「仕方ないだろ…ただの恋愛相談って訳には、行かないんだから。」
「まあ、頑張れ。陰ながら、お前の無事を祈っといてやるよ。」
知らない人が俺達の会話を切り取って聞いたら、佐野の言い方は、冷たい様に聞こえるかもしれない。
でも俺は、知ってる。あれは、あいつなりの優しさを含んだ言い方なんだって。
「Thank You。頑張ってくるわ。」
そう返して、俺は、残りの仕事を片付けに掛かった。
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