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約束の場所で、俺は、課長を待っていた。
「すまない、待ったか?」
「いいえ。俺も、さっき着いたばかりですから。」
そう言って、本屋の紙袋を振ってみせた。
「予約してた本が届いたって連絡もらって、取りに行ってたんです。」
「なら、よかった。会議が長引いていたからな、梶尾のことを、待たせたかと思って…。」
「俺がお願いしたんですから、何時まででも、待ちますよ。気にしないでください。」
「遅れたお詫びだ。夕飯代は、私持ちにさせてくれないかな。」
「そんな、滅相もない。」
俺が、拒み続けるから、課長は、苦笑いしながら
「割り勘なら、いいだろう?」
と、聞いてきた。
「はい。それなら、いいです。」
俺の返事を聞いて、課長は、なぜか、フフフ…って、笑っている。
「梶尾のそういうところ、好きだよ。」
「こんな所で、サラッと言わんでくださいよ…。」
「嫌だったか?」
「…知りません。行きますよ、課長。」
…なんで、俺が、照れなきゃなんないんだ。
複雑な気持ちで、俺は、課長の前を歩き始めた。
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