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「…梶尾…私はな、自信がないんだ。」
「自信ないって、課長がですか?」
「そんな、不思議そうな顔するな。私だって、普通の人間だ。得手不得手は、あるよ。
私が、自信ないというのは、女としてというか、恋愛に対してだ。いい年齢して、臆病風吹かしてるんだよ。そいつのきっかけは、よくある恋物語だ。
昔の私はな、どこにでもいる見てくれが、可愛いだけの女の子だったんだ。
実際、学生時代は、それなりに男子には、人気があって、ラブレターをもらったこともあったし、告白されたこともあった。
でも、同年代の男子に、私は興味なかったんだ。
私が振り向いて欲しかったのは、年上の人だった。憧れていた、その人の彼女になりたかったんだ。
彼に私という者を認めてもらいたくて、必死にアピールしたんだよ。死に物狂いだったんだろうね。なんとか、彼の側にいることが出来るようになったんだ。」
「よかったじゃないですか。」
「いいや、全然よくない。…私は、考え方が子供だったんだ。
側にいさせてもらえる。それが、彼女の証だとでも思っていたんだな。本当は、彼女でもなんでもないのに、有頂天になって何も見えなくなっていた。
彼にとったら、私なんて、手玉にとりやすい、都合よく遊べる女の子だったのさ。
本命の女の子は、別にいて、その子を落とすまでの繋ぎみたいなものだったんだよ…私は…。
それ以来な、ちょっと恋愛には、臆病風吹かせるようになってしまった。」
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