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なんなんだよ、さっきのは一体…。
俺は、小一時間前の出来事と結果に、まだ頭がついていってない。
彼女はというと…普段と変わらずに午後からの職務に精を出している。
あんなこと言われたら、頭から、離れないよ…。
あの切り替えの速さ…俺にも分けてくれ。
頭を抱えながら、俺は、この半日を振り返っていた。
今日は、いつも通りに出社して、朝礼の後、簡単な書類整理をしたあと、上司である有栖川課長と一緒に営業周りをした。
何軒かのお得意様を、回って、お腹が、小さく鳴り出した頃合いに、課長が、俺に笑い掛けながら言った。
「おや、もうこんな時間か。……梶尾、今日は、よく頑張ったな。ご褒美に奢ってやるから、昼、付き合いな。」
「えっ、いいんですか?!」
「私が、お前に、嘘ついたことあるか?」
「ハハハ…今のところは、ないですね。」
「だろう。さて、なに食べるかな…。」
課長は、少しばかり悩んで、俺を連れて来たのは、小洒落たカフェだった。
奢りだし、何度もこの店には、来てるみたいだったので、注文は、課長に一任した。
頼んでくれたランチセットは、女性が好きそうな野菜多めのメニューで、デザートと珈琲まで付いていた。
一通り食べ終わり、食後の珈琲を飲んでたんだ、あの時は。
まさか、あの場で、いきなりの彼氏になれ宣言には、驚くしかないだろう。その上で、上司命令だ?!普通に考えて、おかしいでしょ、そんなのはさぁ。
…職権乱用だよ、あの人。
そんなことを考えてるせいで、報告書が、遅々として進まない。途中、報告を書きながら、フッと、彼女の方を覗いてみたら…。
あちゃあ…。
たまたま、椅子を動かした彼女と目が合った。
次の瞬間、俺は、目を疑った。
えっ!えっ!ええっ!!
笑った。課長が、俺に笑った~ぁあ!!
入社半年、 俺個人に向けて、あんな顔したの初めてだ。それは、まるで、野原にポンと咲いたタンポポのようだった。
俺の胸が、キュンとなったんだ。
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