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それから、あっという間に年が明けて、年始の休みも明けた私は元気に出勤できるようになっていた。あの旅行は、ある意味ちゃんと気分転換になったようだ。たぶん、あれからも健人が変わらずいてくれたのもあるのだろう。私が仕事を休まずに行けるようになったことを伝えると、彼は自分のことのように喜んでくれた。
“ほんとに良かったねーーー!!”
仕事が順調だと報告するたびに、彼からはそんなメールが届いていた。
そして、2月の始め。今まで私の体調を案じて連絡をくれることが多かった彼は、もう安心したのか忙しいからか分からないが、連絡の頻度がぐっと下がっていた。少し淋しい気もしたが、私も頼ってばかりではいけないと自分を奮い立たせて仕事に打ち込んだ。
「今日も、返事なかったな」
そう呟きながら、私は部屋でケータイを見ていた。寝る支度を済ませて、布団の中に入ったところだった。思ったより、心苦しさを感じない。それは妙な心地だった。たしかに彼のことが好きだったのに、それ以上に、彼が元気で笑ってさえいてくれればいいと思う自分がいた。私は、彼のことをどう思っていたのだろう。
「あーつこ」
そう、口に出して言ってみる。彼だけが呼んだ私の名前。目をつむればいつでもそんな声が聞こえる気がする。それだけで、元気が出た。
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