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どんな時でも、なんの疑いもなく、ただひたすらに自分のことを信じて背中を押してくれる人がいるというのは、とても尊いものだった。それを、改めて思う。
“あつこ”
その名前は、私の心の中の箱にすっと収まった。まだ夏には程遠いのに、向日葵の花が頭に浮かんだ。それは、太陽に似た花。彼のイメージカラーは黄色だったな、と不意に思う。底抜けに明るくて、彼が口を開くと、つい周りも笑顔になるような、そんな人。
これでいいんだ、そんな風に落ち着いた。私たちの関係は、傍から見ればやっぱりおかしなものだったように思う。けれど、私の中では、彼はいつまでもずっと大切な人なんだろう。確信にも似た思いが、心に広がった。
真面目な話の時だけ、“健人くん”と呼んだ。
懐く子犬のように“あっちゃん”と呼ばれれば、“けんちゃん”と返した。
ふざけてばかりいたから“パー子”と呼ぶ私を、“あつこ”と言ってくれた。
太陽が私にくれた名前。
またいつか、その名を呼んでくれる彼に会えることもあるかもしれない。それでいい。
温かい気持ちが胸を満たして、私はそのまま眠りに就いた。
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