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「んー、そっか。それなら、分かるまで今まで通りでいてくれる?あたしも曖昧な告白になっちゃったし。正直、付き合いたいっていうよりは、気持ちを知ってほしかっただけかも。今までみたいなままで、これからもいてくれるのが一番嬉しい」
強がりでもなんでもなかった。むしろ、伝えた今が、とても清々しかった。恋愛は、片想いのときが一番楽しいことを私は知っている。そう理解した上で、相手がどう思っているのか悩んで勝手に落ち込むことだけを、私は取り除けた気がした。だって、彼は嘘が付けない人だから。
「んー、あつこはそれで辛くないの?」
申し訳なさそうに私の顔を覗き込んでくる。
「うん、自分でも不思議なくらい、全然辛くない」
きっぱりと言い切った。たぶん、彼にはその方が気を遣わせない。気を遣われるのが、一番嫌いなのだ。
「じゃ、いっか。ごめんねー、ほんと、恋愛とか全然してなさすぎて、感覚がまったく分かんないや」
まるで緊張感のない声が返ってきて、それが心地良かった。
「じゃあ、またね。別に、あたしは気も遣わずにいつも通り連絡するし、パー子も好きなタイミングで連絡してね」
あっさりしているくらいが丁度いい。周りから見たらきっと、おかしな感覚なのだろうとは思うけれど、これが今の私たちにとって、一番いい距離感な気がした。
「うん。俺もいつも通り、返せるときに返すよー」
彼も、それを感じているようだ。私たちは、そのまま別れた。夜風も落ち着いていて、なんだか私の心を表しているようだった。
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