副会長様とロイヤルストレートフラッシュ

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AM5時30分。副会長様の朝は早い。 人に注目される事が多い立場のため、身嗜みには時間をかけて気を付けるようにと、璃王から言い聞かせられているからだ。 …なんて、謎のナレーションが脳内を流れるのは確実にまだ寝惚けているからだろう。 「…ん、」 目覚まし時計のアラームに強制的に意識を覚醒され、肌触りのいい毛布の中で寝返りをうってもぞもぞと起き上がろうとしていた身体は、後ろから抱き締められる重さでそのままぱたりと力尽きてしまった。 元々、早起きは苦手な方ではなかった筈なのに、最近はなかなか朝早くに起きる事が難しい。 「あ゛…ごじはん…?」 抱き着かれた背中越しに腕を伸ばす気配がして、ナイトテーブルの上に置いた目覚ましを止め不満そうに呟いた低い声は掠れている。 「早ぇだろ…」 目覚ましから手を離し、後ろからしっかりと抱きしめ、肩に顔を埋めて囁いた唇の動きが擽ったい。 「今日の新入生歓迎会が始まる前に打ち合わせがあるんです…ゃ。こら、離しなさい。ん、伊瀬!」 抱き締めた腕はそのまま寝間着の中へと入り込み、ゆったりしたサイズの首回りから露出した肩を軽く吸われ、身体が跳ねる。 「それにしても早いだろ…夕べは遅かったんだからもうちょい寝ろ」 「っだ、誰のせいで眠れな…っひゃぅっ?!」 「お前がしがみついて離れなかったせいだろ」 「んっ、や、違…して、な…んゃ、ゃ、やめ…ーっ」 ちゅ。ちゅ。と、肌を吸う音に耳まで真っ赤にしながらじたじたと暴れ、なんとかベッドから抜け出した時には寝間着は半分以上脱がされかけていた。 副会長様の朝は早い。 なぜなら、同室の恋人の妨害のせいで、毎朝30分は確実に時間を潰してしまうからだ。
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