副会長様と入学式

7/9
1847人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
頭を撫でる篠崎会計から遠慮がちに離れると、まだ人前に立つことに慣れていないのかやや緊張の面持ちで背筋を伸ばし、ぎくしゃくとした動きで前に出た、焦げ茶色の髪に大きな猫目の生徒が勢いよく頭を下げる。 『い、いちね…じゃなかった。2年の楢木です!会長補佐をしています!宜しくお願いします!』 「楢木ぃーがんばれー」 『お、おう!頑張る!』 クラスメイトだろうか。2年の席の一角から飛んできた声援にニッと笑みを浮かべてぶんぶんと手を降り、やりきった顔で元の場所に戻る楢木の姿に黒髪の生徒は和んだように頬を緩ませ、対照的に御剣会長は苦虫を噛み潰したような不機嫌な顔を浮かべている。 『では、次に副会長補佐の観月よ…『2年生の観月でぇーすっ!一生懸命頑張るから、みんな応援してくださーい』 「「「「観月ちゃーーーんっ!!」」」」 「「「観月先輩っ頑張ってくださーい!!」」」 『ありがとー』 観月副会長補佐のフルネームを口にする前にきゃるきゃるとした声に割り込まれてしまい、そのままアイドルコンサートのようなノリでぴょんぴょんと跳び跳ね、声援に応える姿に思わず目を見開いて固まってしまった。 「先輩。与四郎のフルネームは公式の場ではNGっすよ。ちなみにこの騒ぎは、与四郎は中等部の時も生徒会に居たから新入生からしたら一番知ってる先輩だし、おまけに去年はミスコンに優勝もしましたしね」 「あ、ああ。そうですね。なるほど」 きゃぴきゃぴと手を振る観月与四郎副会長補佐がくるりと生徒たちの席に背を向けた瞬間に浮かべた、目の前の庶務曰く、『新世界の神が浮かべるような笑顔』は見なかったことにしておきたい。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!