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「しかし、2周してきたとか流石だよな!」
「龍司先輩ズルい!」
「うぅ…不可抗力だったのです…降りるタイミングを忘れていて…」
帰りの車で楽しそうな眞城から目を逸らし、ぴーぴーと喚く直光が伊瀬にシバかれた音は聞かなかった事にして現実から全力で逃避する。
「降りるの忘れるくらい二人のセカイだったんだねぇ」
「違います」
「ねーねーヒロちゃん」
「…なんでしょう」
ぷにぷに。と頬をつつかれ、渋々ハトリに視線を向けると、眩しいほどの笑顔が向けられる。
「そのオソロイのペン、可愛いねぇ」
「う…」
「仕舞うの禁止ねぇ」
「氷呂ちゃん先輩とお揃い!見せて見せて!りゅーじ先輩見せ、ぴぎゃ!!」
「触るな」
再びべちんっ!とイイ音を立てて叩かれ、座席に崩れ落ちる直光は見ないようにしながら、べったりと密着して隣に座るハトリのセクハラに心を無にする。
「ヒロちゃんさぁ、伊瀬ぴょん先輩と同室になってからお肌すべすべだし髪の毛艶々だし、なんか可愛くなってるよねぇ」
「な、なってませ…」
「良かったねぇ」
ぷに。と頬を指でつつかれ、無邪気ににっこりと笑うハトリの綺麗な笑顔についつられて笑みが浮かび頷いてしまい、更に嬉しそうに笑みを浮かべられた。
「……悪くは、ないと思います」
「そっかぁ。良かったねぇ」
「そうですね…」
隣からじりじりと伊瀬の視線が恐いし寮に帰ってからも何やら煩そうだけれど、それも別に悪くない。
胸ポケットにさしたペンを布越しに軽く押さえながら、そう、ハトリに笑いかけた。
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