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☆
マンハッタンの夜の街。異国の雰囲気に雑念が洗い流される。
ノブアキと別れて一人、まっすぐホテルに帰る気がしなかったから、1階ロビーのバーに立ち寄った。
僕はお酒ではなくコーヒーを頼んだ。
周りは外国人だらけで音楽に合わせて踊っている人や話し込んでいる人たちばかり。誰も僕のことを気にする人はいない。
僕は今までミエと一緒にいることで、どこか自分は普通の人間である、ということを無意識に証明したかったのかもしれない。安全である、普通である、と、人からそう見えていてほしかったのかもしれない。
残念ながらミエに対して性的に惹かれるところは何もない。
けど、自由に男たちと恋愛できるミエのことが、どこかで羨ましかった。単純でわがままで明るくてずうずうしくて。僕のことを自分のもののように所有するミエ。彼女をそばに置くことで、僕は普通のストレートな男性で、人に好かれるいい人間だってことを証明したかっただけかもしれない。ミエの男運が悪いということでかろうじて優越感が保たれていた。だからミエが僕に告白してきたとき。それはすべての男に勝ったようでもあり、世間を欺けた僕の勝利であり、本当のことが言えなかった僕の敗北でもあった。
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