あとがき

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あとがき

   七瀬(ななせ)(にお)ともうします。ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。  大正時代に生まれた亡き祖父母がまさに第2次世界大戦の経験者でした。実際、祖父はトラック諸島に駐留していたそうです。  夜になると必ず祖父は魘されておりました。本編同様に「おおいおおい!」と、隣室(仏間が私の寝室だった)で眠る私が思わず飛び起きるほどの大声で叫びます。そしてそれを「おじいさん!」と言ってなだめるのが祖母の役目。そのやり取りは祖母が他界するまでつづきました。他界後にはぱったりと止み、おばあちゃんが持っていってくれたのかもと親戚一同で話した記憶もあります。  戦争を知らない私ですが、祖父母の日常こそが第2次世界大戦を教える教科書でした。なにも回顧録に耳を傾けなくとも、日常に目を馳せればいくらでも学習することができたように思います。幼心に抱きつつも決して尋ねられなかった「おじいちゃんも米兵(ひと)を殺したの?」というクエスチョンもまた優秀な学習教材のひとつ。  お祖父ちゃんお祖母ちゃんっ子(両親が共働きだったため)であるがゆえに、祖父母の姿に大戦を重ねては複雑な気持ちを抱えていた私のこと、なので「戦争=悲惨」というシンプルな等号がしっくりときません。もっと絡まりあっているものであり、ややこしいものであり、厄介なものなのだという感覚です。それこそ、駄菓子を片手に茶化さなくてはやっていられないと思ってしまうほど──本気で茶化すようなことではないと知りながらも。  とまれかくまれ、幼少時の記憶や感情をこの物語に込めました(茶葉を煎るシーンとか)。とはいえ、私は「みんなで難しく考えましょう」と示唆する性格ではないのです。めいめいが自由意志のもとに思考を凝らされることをよしとします。  この物語は恋愛小説であり青春小説です。エンターテインメントであればよいと願う次第です。やや書き方に難があるかも知れませんが、いずれにしても物語の善し悪しは皆様にゆだねようと思います。  
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