第三章 『私達の一陽来復』

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*** ** ―――3月初旬。 真冬の凍えるような寒さはなくなり、どこか生温い風が吹き始めた頃。 学校では、卒業式に向けての練習が行われていたり、皆が春を迎えるための準備を進めているように思える。 私は、朝から茶房『さくら』で、店番をしていた。 「唯ちゃん、お祖母ちゃんちょっと買い出しに行ってくるから、一人で店番頼めるかしら?」 「うん、大丈夫だよ。いってらっしゃい!」 いつも朗らかで優しいお祖母ちゃんは、にこにこと手を振って店を出て行った。 そんなお祖母ちゃんの後ろ姿を見て、胸がギュッと締め付けられるような切なさに襲われる。
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