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ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。煮えくり返った内臓が押さえつけられて破裂しそうだ。レンガの欠けた部分にうつ伏せに押し付けられた俺の頬は切れて血が出ていた。
背中に奴の体重を感じる。体温が気持ち悪い。のしかかられたまま、手首にガシャリと冷たい手錠がかけられる。
「1th、April。13:26 殺人の疑いで容疑者、亜蘭=モルガン逮捕」
じたばたもがいても、俺の上から男はどこうとしない。男の高級そうなスーツにせめて血でもつけてやろうとしたが、すっとかわされた。
「やめなさい。高いんだ。高給取りの君でも買うのに苦労する」
「嫌味か。このサドクソ野郎」
「口が悪いね、混血の殺し屋。亜蘭=モルガン。俺はサドクソ野郎じゃない。俺はポールというんだ。ポール捜査官だよ。殺し屋としてのお前を殺す男の名だ。覚えておきなさい」
遠くからパトカーのサイレンの音が近づいてきていた。なんて日だ。捕まれば俺は終わりだ。今まで数え切れないほどの人間の臓物をエグりとってきた。嗜好じゃない、依頼だ。
殺されるならまだいい。警察に捕まるなんて1番勘弁被りたい最期だ。ここには死刑制度はない。生かさず殺さず飼い殺し。自然に死ぬまで不味い飯。
「……こんなことなら今朝、珈琲飲んでくればよかった」
今後の人生で2度と口にすることがないであろう、芳醇な香りの嗜好品。
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