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「――――誠慈さん?風邪ひきますよ」
眞里絵が、傍らに座って肩に触れながら顔を覗き込んでいた。
「昨日サーバーの件で遅かったみたいだから、寝かせといてあげたかったんですけど、布団もかけないで寝てたら冷えるから……どうかしましたか?」
「……なんでもねえよ」
見下ろしている彼女の頬に無造作に手を伸ばしかけ、その手を止めた。
いつも、思う。今は、たまたま自分の持って生まれたものを彼女が必要としているだけで、自分は彼女の恋人ではない。我が物のように扱ってはいけない。
「……抱いても、いいか」
「嫌なら来ません、っていつも言ってます」
微笑みと共にふわりと温もりが重なり、頬に彼女の唇を感じた。さらりと流れる髪の香りは、海棠自身も同じものを使っているはずが、なぜか艶かしく甘いものに感じられる。
背中に手を回して強く抱きしめて、思う。
失いたくない。たとえ彼女を守るために他の誰かを見殺しにすることになっても。
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