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10年は長かった
それでも、千鶴に会えると信じて生きてきた
約束したから
というよりも、信じたかった
「懐かしい……」
まだ少し肌寒い道を歩く
丘の老木は、昔と変わらず綺麗に咲き誇っている
教わった場所には、新しい墓石
刻まれているのは、2年前に他界した千鶴の名
私が退院する時には、1年もたないと言われていた千鶴
そんな彼女が、8年も生きていてくれた
喪失感は大きいが、懸命に生きていたであろう千鶴を思うと、ほんの少し心が温かくなった
泣いてはいけない
そう言い聞かせながら、墓石に手を合わせる
「10年ぶりだね
千鶴……」
ーー七海ちゃん、ひさしぶりだね
目を閉じると風に乗って、優しい声が耳元で囁くのを感じた
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