第五章 弐

53/55
647人が本棚に入れています
本棚に追加
/715ページ
「倉橋君っ! 頼む。俺じゃ、相手出来ないっ!」  切羽詰まった佐々木の声に頷くまでもなく、自分の首にぶら下げたシルバーのネックレスをTシャツの中から引っ張り出す。  トップには翡翠の勾玉。  倉橋はその勾玉を一度強く握りしめると、胸の前で、両手の指を絡め合わせ、普通では見慣れないような形にした。  それは、映画や漫画で陰陽師や呪術者が結んだり、お寺のお坊さんが何かの儀式で結ぶような形であり、専門用語では【印を結ぶ】と言われるもの。  印を結ぶという事は特別な力が働くという事。  倉橋は、瞼を閉じ、呼吸を整えた。
/715ページ

最初のコメントを投稿しよう!