第二章 伍

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 だが、一ヶ月ちょっと経った頃、とうとう、あの物件を案内して欲しいという希望者が店頭に現れた。  菊池は、「ようやく来たか」とでもいうような表情でまったく動じず、笑顔のまま対応し、現地案内の日程を手際よく決めた。  その時、周りにいた人間達の不安そうな顔が気になっていたのだろう。  菊池はお客が去った後、おちゃらけたように口を開いた。 「これが決まれば、俺もいっぱしの営業マンだなっ」  いわくつき物件の契約をとれるというのは、通常かなり骨の折れるもの。  だからこそ、この台詞を言う事で、周りに自分は大丈夫だという安心感を与えたかったのだろうが、その時、彼の背後に声をかけた者がいた。
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