第二章 伍

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「あひゃ……へへへへ。人が消えたぁ……」  落ち着きを取り戻した菊池によって、死体発見の連絡を受けた警察が現場に駆け付けるまで、悪臭と暗闇の中に取り残された警察官は、二度と正常な状態に戻れないほど精神を崩壊させ続けていた。  その日の事は上司に報告したものの、少女の霊のことに関しては、流石に常軌を逸しているため話す事は無かった。  とはいえ、日々、口数が少なくなり、覇気が無くなって行く彼を心配した一部の同僚達は報告されている事以外に何かがあったのだと確信し、常に心配していた。  そして、安藤を含むごく一部の人間だけが、「俺は、もう駄目かもしれない」という、菊池の弱気な発言を気にして開いた飲み会の席にて、「せめて、あの時の恐怖を共有してくれ」と震えながら懇願する本人の口から、あの夜の出来事の全てを直接聞いたのだった。
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