HENTAI

第一章 弐

　しかし、その当時の入居者の中で、今現在も住み続けている人間は一人もいないのだが。

「大体、そんな呪われた物件なら、改修工事なんてせずに、さっさと壊して、建て替えちゃえば良かったのに、未だに入居者募集してる方が悪いんじゃない」

　まさに彼女の言っている事は正論。

　それでも、尚も自らが部屋を案内する事に対し渋る男は、あーだこーだと、何かにつけて理由をつけては、夏樹一人で部屋を確認する事を勧めるが、その度に理路整然と不動産契約に基づいた切り替えしを述べられ、ぐうの音が出ないほど言い負かされるだけでなく、最後にダメ押しとばかりに、フンッと勢いよく鼻を鳴らされ、小馬鹿にしたような表情で見下ろされた。