第三章 参

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 そんな夏樹に対し、飯田は「時間がねぇんだ。お前に色んなノウハウを教えている暇もなけりゃ、慰めてる暇もねぇ。ただ、おめぇにしか出来ない事だってある」と、彼なりの励まし方で頭をポンッと軽く叩いた。  その後で一之瀬が背後から近付き、「直訳すると、アンタはさっさと引っ越しして、呪いの主と会話でもしろって事ですよ」と言って来たかと思えば、更に、「ま。霊能者やイタコでもないアンタが、まともに幽霊とコンタクトが取れるとは思えませんけどね」と、鼻を鳴らして夏樹の横を通り過ぎて行った。  一之瀬の人を小馬鹿にしたような見下した態度が、臆病風を吹かしていた夏樹の心に火を点け、ようやく契約した部屋で寝泊まりする事を決意したのだ。
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