第三章 肆

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 結局、警察から夏樹が解放されたのは、夕闇がにわかに色濃く迫っている頃であった。  あれから、アパートに数人の警察官や野次馬だけではなく、一体どこから情報を入手しているのか既に報道各社もこぞって集まっており、辺りは騒然とした。  そんな中、制服を着ていない、ドラマや映画等で見た事のある「いかにも」な感じの男性が夏樹の傍に近寄って来た。 「はじめまして。私は、警視庁刑事部捜査第一課の佐々木 力(ささき りき)と申します」  穏やかな口調で名刺を渡しながら自己紹介をする。  刑事ドラマなんかで見るように警察手帳を見せる訳ではないのだと、混乱しきっている頭でも冷静に観察していた。
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