第五章 弐

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『起きて。ねえ、起きてよ。オネエチャン』  真っ暗な闇の中。  海に漂う小舟に乗って、船酔いにでもあったかのような不快感。  徐々に覚醒していく意識の中で、それが、誰かに肩を酷く揺さ振られているせいなのだと理解するまでに、どれだけの時間がかかったであろうか。  小さな手が、確かに自分の体に触れているのを感じ、薄らと目を開ければ、眼前に人の顔が飛び込んで来た。 「ひいっ」  喉を引き攣らせたような悲鳴を上げると、その声にびっくりしたのか、飛び跳ねるようにして夏樹の傍から、何者かが離れた。  それと同時に、「どうしましたっ?」と、いつからそこに居たのか分らないが、白衣を着た人間と警察官らしき服装をした人間が彼女の周りに集まった。
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